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カンクン会議: きょうから二週目です [地球温暖化問題の国際交渉]

今朝も風もなくすがすがしい感じです.海も波が穏やかですね.

きょうから,二週目に突入します.環境大臣たちも続々カンクン入りしてきているようです.写真は交渉の行われているムーンパレスの外観ですね.昨年の寒かったコペンハーゲンと比較すると夢のようです.ただこの会場も,大臣級が訪れてくると警備が厳しくなりますね...

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日本から持ってきている宿題やちょっと遊びに行ったこともあって,詳細な分析はできていませんが,ちょっといままでの交渉を振り返ってしましょう.

交渉は,SBI,SBSTAの二つの補助機関会合は,それぞれ,いくつもの結論を出して閉幕しました.個人的には,SBSTAのL.23ドキュメントに,興味があります.CDMの方法論をシンプリファイする件に関する点です(タイトルは Standardized Baselines under the CDM ですが,通常の方法論も標準化ではありますので simplification という言い方の方が意味は正しいですね).内容は,CMPが,

Requests the Executive Board to develop standardized baselines, as appropriate, in consultation with relevant designated national authorities, prioritizing methodologies that are applicable to least developed countries, small island developing states, Parties with 10 or less registered clean development mechanism project activities as of December 31 2010 and underrepresented project activity types or regions, inter alia, for energy generation in isolate systems, transport and agriculture, taking into account the workshop referred to in paragraph 8 below.

というところが主です.

CCSをCDMで認めるかどうか,という L.24ドキュメントも注目ですね.内容は,CCSがCDMで適格であることを認めた(!)上で,CMPが

Requests the Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice, at its thirty- fifth session, to elaborate modalities and procedures for the inclusion of carbon dioxide capture and storage in geological formations as project activities under the clean development mechanism, with a view to recommending a decision to the Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Kyoto Protocol at its seventh session;

となっています.ただ考慮すべき点が列挙されており,そう簡単ではありません.

2つのAWGの本体に関しては,土曜日に,どちらも重要な文書が出てきました.

AWG-KP の方は,FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.1 で,議長からのプロポーザルという形態をとっています.

AWG-LCA の方は,FCCC/AWGLCA/2010/CRP.2 で,possible element of of the outcome としています.

ともに内容はまだ精査できていないのですが,閣僚の人たちに見せられる水準にそれなりにストリームラインされてきている(それぞれ 46ページと 33ページ)と感じました.もちろん事務方で決められない部分は,まだ多く残されています.閣僚の人たちは,その決定のためにいるのですから.

なお,国際交渉は,基本的には「妥協」です.それなりにみなが「納得できる」線がどこにあるか探るわけですが,内容もその合意プロセス自体も,そのような「納得感」のためには重要なのですね.

このカンクンでの交渉プロセスは,ある意味,欧州でのハーグ会議(COP 6)で交渉が失敗した後の状況と似ているかもしれません.ただあのときの (これで京都議定書が日の目を見なくなるかもしれないという) 切迫感はなく,次に繋げる最終決定は次回のダーバンかな... というところはあります.

ハーグ会議の後は,COP 6.5 がボンで開かれ,(EUの大きな妥協もあって) マラケシュアコードのコアエレメント(政治的判断が大きい部分)である Bonn Agreements の合意にこぎつけました.そのときに中心となったのは,COP 6 議長のプロンク氏で,(コペンハーゲンで「天から降ってきた」と称された)議長テキストをみずから作成し,それをベースに交渉をぐいぐい引っ張ったものです.

それにみんながついていった背景には,プロンク氏が,(COP 3 のエストラーダ議長と同じく) みなの意見を一生懸命汲んで,でもひとつの結論に持って行くために文字通り粉骨砕身の努力をしていたのが,みなにもよく分かっていたということもあるのでしょう.今回,メキシコは,そこまですることはなく,COP議長からの政治合意のテキストは(いまのところは)出さない... と言っているようです.

いずれにせよ,事務方でできることはそれなりに整理されてきています.COPやCMPでは,Decisions と呼ばれる一連の決定が行われ,それは (たとえ新しい法的な協定の形をとらなくても) 今後におおきな影響力を持つものとなります.

事務方の努力をベースに,大臣たちが,どのように「政治判断」を行ってくれるのか,期待しましょう.

ところで,ここカンクンのカリブの海は,まったく磯の香りがしません.ほとんどものが腐敗していない非常にきれいな海です.実は,日曜は,オットセイ,マナティー,ドルフィンとすこし戯れてきました.わたしはカイギュウという滅んでしまった動物が好きなのですが(エスキモーたちの海にいました),マナティーもその一種です(がこちらは暖かい海ですね).マナティーもそうですが,海の生態系の大きな部分を占める珊瑚礁は,温暖化の影響をかなり敏感に受けます.すこしでも遅らせるように努力したいものです.人間だけの問題ではありません.

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それでは,また.

松尾 直樹 @またエンジンをかけて...

 


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