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カンクン会議: 二週目の水曜日 [地球温暖化問題の国際交渉]

昨日からすこし咳が出ていたのですが,今朝起きたら喉をやられていました.だいぶましになってきましたが... ここ数年風邪一つひいていないのですが,ちょっとカンクンでは疲れているのかもしれません(自覚症状はないのですが).

さて,交渉も新しい議長テキスト FCCC/AWGLCA/2010/CRP.3 と FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.2 が出てきて,本格的な交渉モードに入ってきたようです.

インドから(BASIC各国間で共有されているようです),AWG-LCA の途上国緩和パートに関して,新しい提案が出てくるなど,確かに動いてきています.この提案は,途上国の行動 (NAMA; Nationally Appropriate Mitigation Action)とからんで出てくる National Communications や ICA (International Consultation and Analysis) に関するものです.

ここでもういちど,カンクンで得られるものを国際交渉の点から整理してみましょう.

まず,たとえ新しい国際協定が採択されなくとも,COP Decisions, CMP Decisions は採択されます.このなかに,いかに実効性があり,将来の方向性を付ける決定をたくさん含めることができるか?という点が重要な点です.法的拘束力はありませんが,実質上,それに基づいて国際社会が動くわけですから.

何度も発言されていることですが,それは「バランスの取れた」ものである必要性があります.言い換えると,どの国もそれなりに納得できる「妥協」ポイントを探すと言うことでもあります.ひとつの要素だけが先走ることはなく,あくまで「パッケージ・ディール」であるわけですね.

2つのAWGでは,事務方(各国の官僚のことです)が,できるだけ詰められる点を詰めて(トレードオフの関係にある主要エレメントを整理するわけですね),残ったきわめて政治的色彩の強い点を,大臣級が「バランスを考えながら」パッケージとして政治合意する,というプロセスが一般的です.その意味では all or nothing (もしくは合意できる事項を確認して交渉継続)とも言えるでしょう.

当然ながら,交渉を行うものは,国としての方針はもちろん必要ですが,交渉に当たっての裁量の幅が与えられなければ,きわめて苦しい状況に陥ります.大きな決定にあたっては,最終的には,環境大臣から総理大臣に打診して決定されると言うこともあります.首脳が直接電話会議を行って (たとえば京都会議はクリントン大統領と橋本首相が電話で決定しました) ゴーサインを出す必要が出てくるかもしれません.

なお,合意は「コンセンサス」ベースで行われます.コンセンサスとユナニマス(全会一致)とは,すこしニュアンスが異なります.

さて,サイドイベントですが,昨日お伝えした日本関連の IETA (International Emissions Trading Association) 主催のサイドイベント “Japan: Shaky politics, nervous business, and a big, big reduction target” に行ったのですが(経団連というのはまちがいでした),10分遅れだったにもかかわらず,壇上には M物産の I氏だけでした.他の人は帰ったか 来られない... ということで,急遽 わたしがピンチヒッターをさせられました.日本の「考え方」は,やはり外国の人にはかなり「不可解」ですので,そのあたりを説明したつもりですが,はたして30人ほどいた人に伝わったかどうか...

そうそう関係ないのですが,IEATサイドイベントの会場のWestin Hotelの入り口に,ソーラーバイク(?)が展示してありました.

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EU の行った EU ETSに関するサイドイベントは,はじめの部分は出られなかったのですが,eurelectric (欧州の電事連みたいなものです)が,電力会社の考え方を説明していました.自由化や大陸レベルでの系統連系の進んでいる欧州と,9社体制で自由化が限定的な日本のケースと言うこともありますが,かなり考え方が違います.下のスライドは,温暖化対応戦略とは,電力会社のすべての部門が関与する問題で,もはや企業戦略とほとんどかぶっている... ということを示したものです.

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日本の気象研究所に相当する 英国の Hadley Centre のサイドイベントでは,IPCCの第4次評価報告書以降の研究がどう進んできているか?の説明がありました.Hadley Centreは,気候モデルシミュレーションで有名ですが,モデルはあくまで「各プロセスの理解」が進まなければ改良が進みません.氷床の減少が思ったより進んでいることなどが取り込まれてきているようです.

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ただ,わたしが個人的に非常に興味のあるある abrupt climate change すなわち 気候系が突然大きく変化してしまうような事象に関しては,ほとんど進展がないようでした(質問したのですが,その人が知らなかっただけかもしれません).

PEARの得意とするプロジェクトですが,民間のデベロバと,民間の投資家を結びつけるチャンネルを,CTI (Climate Technology Initiative) が,PFAN (Private Financing Advisory Network) という形で行っています.CTIは,日本がイニシアティブをとってつくったものですし,ICETT がその事務局をしていることもあり,わたしの PEAR のプロジェクトも,ぜひ,これに載せていきたいと思っています.

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そういえば,初日の話でみなに衝撃を与えて以来,日本の動きは目立ちません.交渉には妥協などのできるフレキシビリティーが与えられることが必要なのですが,あの発言が日本交渉代表団の柔軟性を奪ってしまったという見方もできるかもしれません.どこか(国内?)の方面への牽制球という政治的意味合いもあったでしょうが...      後逸...

松尾 直樹 @外はおだやかです


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