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カンクン会議が終幕しました [地球温暖化問題の国際交渉]

二週間続いた カンクン会議 (COP 16/CMP 6) が終わりました.やはり朝までの徹夜の交渉でした.

結果は,UNFCCC のWeb に,決定文書のパッケージ (カンクン・アグリーメント) として出ています.

ふつうのCOP参加者は,COPが終わると疲労困憊して帰路に就くのですが,わたしはこれからが仕事なのです.最終版の decisions や各種情報を読み込んで,プロとしての分析をするわけですね.詳細な内容は,報告会でお話しいたします.日本のメディア等とはかなり異なった視点での分析となると思います.ご期待ください.

当然のことながら,このような国連の下での COP 交渉は,どの国も自国の主張と,他国の主張とのぎりぎりの妥協点を探ることになります.いろいろな思惑の中での交渉となるわけですが,その中で,いかに信頼感を醸成し,ロジカルに説明し,実績を示し,相手の主張や関心事にも譲歩していくか... が,重要となります.みなが核廃絶の重要性が分かっていてもそれがすぐにできないとと同じように,一体感・共有感をもって,一歩ずつ,進めていくしかありません.

当然のことながら,誰にとっても 100%満足する結果などはありえません.そのなかで,それなりに満足感をもてる結果が得られれば,それは成功 (のひとつの指標) と言えるかと思われます.

カンクン会議は,コペンハーゲン会議が誰にとっても不満足な結果に終わってしまったのを受けているわけですが,事前交渉などの進捗も芳しくなく,次の南ア・ダーバン会議に向けての通過点でした.その中で,どこまで「進めておくことができるか?」ということが,重要なポイントになります.ヘタをすれば(成果がほとんどなければ),対策の国際的モーメンタムが削がれる危険性すらあります(COP 6交渉が失敗に終わったときにもその危険性がありました).

もうすこし具体的言えば,

     ・将来の方向性を世界に示すことができるか?

     ・コペンハーゲンアコードの運用面を整備

 の2点が重要な気がします.

この2点に関して,カンクン会議は,それなりに成果を出したと思います.とくに 2点目に関しては,十分に及第点ではないでしょうか.なにせ,LCA の決議文書 も KP の決議文書 も,[  ] のない文書の合意に成功したのです(かぎ括弧は未定部分を意味します).

ICA (途上国の行動の国際的な審査プロセス) など,かなり政治的色彩の強いアイテムに関しても,きちんと合意できているようです.

最大の政治的課題である京都議定書の第2期の目標値などに関しては,カンクンでは決まっていません.これは当然で,ダーバンで政治決着することとなります.途上国の行動や,LCA側の法的な位置づけなどもそうです.

逆に,このようなポイントに集中するところまで整理できたと言うことは,ハイレベルの政治判断の部分に大臣の関心を集中することができるわけですね.

カンクンの成果が,きちんと「バランスの取れたアウトカム」となっていたかどうか?は,実際に交渉を担当した人たちの 次の写真がよく表していると思います(IISDからの写真です).

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スタンディング・オベーションですね.すばらしい瞬間です.きちんとバトンは,みなが満足できる形で 南ア・ダーバンに渡されたと言えるでしょう.

非常に多くの国から,カンクン会議の成果を評価する声と,エスピノ−ザ議長の努力をたたえるインターベンションがありました.できたら,日本にもその中の一国になってもらいたかったものです.

ついでに言っておくと,国際交渉はコンセンサスベースです.コンセンサスと全会一致(ユナニマス)は異なり,今回は,一カ国だけだだをこねていたボリビアの意見を,握りつぶしました.

 

二週間 お世話になったカンクンメッセは,もはや「兵どもが夢の後」です.

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それでは,日本でお会いしましょう.

松尾 直樹 @ビデオや決議文を分析中

 


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