製品の名前は EGAO としています.このロゴは,どんな国の人がみても「笑顔」ですよね.
製品は,このようなものです:
また,今朝の朝日新聞の2面にも掲載されましたので,よろしかったらご覧下さい.
松尾 直樹
]]>PEARは,Sustainable Energy for All のコンセプトに基づき,活動を行ってきていますが,現在,バングラデシュとエチオピアで,ピコソーラータイプの製品普及型 BOPビジネス をはじめようとしています.電気にアクセスできていない12億人が,再生可能エネルギーによる電気 (主として照明と携帯電話充電) の便益を享受できるようにするものですね.
長期的には,教育の問題や低炭素型経済社会構築に向けての一歩になると思っています.なにより非常に多くの人によろこんでもらえるプロジェクトであるわけですね!
類似活動はいろいろありますが,いろいろなノウハウやビジネスとしての独自の工夫を組み込もうとしています (まだ秘密です(笑)).イノベーションにまで持って行けるか?が課題です.BOPビジネス全体に関しては,昨年 季刊環境研究向けに書いたペーパーがありますので,よろしかったらご覧ください.
収入を得たいという目的でしたら,ほかのことをした方がずっと楽です.太陽光発電という分野に絞っても,メガソーラーの方がずっと楽でしょう.ただ,このペーパーにも書きましたが,
「社会的意義や使命感を実感し,バリアを克服するためのイノベーションを見いだす.そしてそれを結実させるまでの創意工夫とプロセス,それが BOP ビジネスの醍醐味であろう」
ということで,そのような活動を行う「価値」や「意義」が,モーティベーションとなっています.「創意工夫のおもしろさ」も,いいですね!
すこしでもご関心のある方は,ぜひご連絡ください.なにか協同できるかもしれません.
今年もよろしくお願いいたします.
松尾 直樹
]]>
PEARは,いままで海外の貧困地域におけるプロジェクト開発を行ってきました.今年も,バングラデシュにおけるマイクロユーティリティーモデル(JICAのBOPビジネスのFSは終わりました)など,通常の「援助」とは異なるアプローチで,エネルギーへのアクセス問題に寄与するプロジェクトを推進していきます.
一方で,カーボンオフセットなどを通して,そのようなプロジェクトに「参加」してもらえるようなプラットフォームづくりもつくっていきます.まずは,そのプラットフォームであるプロジェクト紹介のWebを立ち上げました.コラムやFacebook等も,これから整備していきますので,ご期待ください.
また,個人的にこのような活動をつくっていくことや,新たな活動をしてみたいという方々に,さまざまな機会にお声がけして,関与していただける場をつくっていきます (すでに何人かに手伝ってもらってきています).地球温暖化対策,途上国貧困地域の開発や再生可能エネルギーに興味があり,PEARの考え方に共感していただける方は,ぜひお声がけください.新しい事業を含めて,いっしょに取り組めれば... と思っています (そのような方々の梁山泊的なプラットフォームにしていきたいと思っています).
今年の年賀状を作成いたしました.
今年もよろしくお願いいたします.
松尾 直樹
]]>あけまして おめでとうございます!
久しぶりの更新になってしまいました.申し訳ありません.
新しい年を迎えるにあたって,年賀状を作成いたしました.写真は,最貧国であるバングラデシュの子供たちのくったくのない笑顔です.このような笑顔が,われわれの目指すものですが,同時に,再生可能エネルギーによる持続可能でエネルギー自給型農村の開発という側面もあります.オールターナティブな開発のパスを目指すものです.日本でも 昨年はこのことを 意識せざるをえなかったわけですが,発展途上国でも まさに これからの課題です.PEARは,その solution の具現化を目指しています.
PEARがバングラデシュで協同している Grameen Shakti は,有名なグラミン銀行ファミリーのひとつで,農村のエネルギー開発を担っています.ご興味のある方は,たとえば このムービーをご覧ください.YouTubeあたりで探していただくと,まだまだいろいろでてきます.
]]>新年 あけまして おめでとうございます!
昨年は,カンクン会議で,気候変動問題への対処のアプローチとして,国連の多国間スキームへのモーメンタムが回復しました.ボランタリーな状態でも,先進国(米国です.日本も?)は 実質的に議定書と同等の数値目標を達成していき,途上国は きちんと 測定・報告・検証することで,実効性と透明性を確保しようとするスキームができることとなりました.日本の得意とする PDCA サイクルをまわすようにデザインすることで,対策の実効性をあげることが可能です.そこに日本の寄与があることを望みます.わたしも,そこに自分の知見を活かすような寄与をしてみたいと思っています.
さて,PEARは,昨年末に プロポーズしていた JICAの「BOPビジネス連携支援スキーム」に採択されました.昨年から共同してきたバングラデシュの Grameen Shakti (あのグラミン銀行グループのひとつで 農村のエネルギーアクセスをミッションとしています)といっしょに,かなり革新的なアイデアを,ビジネスの形にデザインしていきます.BOPとは途上国貧困層で,ビジネスを通じて貧困層のニーズを満たし,援助とは異なる形の開発支援を図るわけですね.
ただ,コストの高い日本人が大勢係わってはビジネスとしてまわりませんし,基本的には薄利多売となるため,よほどうまくデザインしなければ,日本企業は体力のあるかなりの大企業でなければ難しいのが実態かと思います.味の素の ワンコイン販売 などは,いい成功例ですね.
PEARは,このような課題をうまく工夫して解決するように,ビジネスモデルを組んでいます.とくに,BOP層の中でも 最貧層までエネルギーアクセスが可能となるような工夫がちょっと自慢です.もちろん,プログラムCDMも重要なコンポーネントですね.うまくいけば,新しいBOPビジネスモデルとして 他国にモデル展開できるかもしれません.
もうすこしシンプルなモデルですが,従来から続けてきた 中国重慶の貧困農村向けバイオガス・マイクロダイジェスター プログラムは,今年はいよいよ CDMとして登録されると思います.うまく拡大していけるといいのですが...
年賀状を作成いたしました.貧困地域の子供たちの未来にとって,エネルギーへのアクセスは basic human needs の中でもかなり重要なものです.PEARは,それを 再生可能エネルギーで (大きな規模で) 可能とさせることをミッションとしています.
左上は,バングラデシュの農村の若い女性と彼女の赤ちゃんですね.右下は,四川省の少数民族イ族の貧困農村で,(日本ではもう見ることがなくなった) お姉ちゃんが弟を背負って世話をしているところです.「笑顔をつなぐCDM」ですね.
中国の現場でがんばっている佐々木の年賀状も下に添付しておきましょう.
もうひとつ,PEARは,先進国の人々や企業に,このような「社会」および「環境」の付加価値を,(おそらく世界初のものとして)提供していきます.日本で受け入れられるようにがんばりますが,ひょっとしたら欧米でだけ受け入れられるかもしれません.そうなったら寂しいですね.
今年は,数年育てていた果実が熟れてくる年です.今年もよろしくお願いいたします.
松尾 直樹
カンクン会議の報告会も無事終わり(資料が欲しい方は有料になりますがご連絡ください),それほど詳しいものではないのですが,簡単なまとめをナットソースジャパンレターに書きました.通常は,Climate Experts のコラム に載せるので,けっこう専門家向けの書き方になっていてブログ向けではないのですが,こちらにも載せておきましょう.
カンクン会議が終わりました.すこし日が経ちましたが,ちょっと落ち着いて,この会議が意味するところを考えてみましょう.
まず重要なことは,コペンハーゲンで危機感の出た「国連のマルチラテラルな体制で地球温暖化問題に対処していく」という機運が,しっかり回復しました.カンクンアグリーメントは,ほとんどすべての国の満足するバランスの取れた決定パッケージであったわけです.それは,このようないわば「中間的な」位置づけにおける COP において,なんとスタンディングオベーションが起きたことからもわかります.世界共通の意思を感じますね.すばらしい感動的瞬間です(写真はIISD).
ここで,カンクンアグリーメントの基幹となるメッセージを読み込んでみましょう.
カンクンアグリーメントは,take note されるだけに終わったコペンハーゲンアコードを COP決定 の形にし,かつ運用面にもいろいろ踏み込んできたものです.
カンクンアグリーメントの「緩和策における大きなメッセージ」は,
1. まだ発展途上国は法的拘束力のある枠組みで規制されることを受け入れる段階にはない.
2. 逆に,自主的には目標を掲げる国も含め,緩和策強化をNAMAの名の下で,明確にした.
3. 今後のアプローチのキーとなる考えは,法的拘束力がなくとも,実効性と透明性をいかに確保していくか,が今後の制度デザインと実効面のポイントであり,MRV,ICA といった方法がその中心となる.
4. 京都議定書以外の先進国(米国)にも,実質上,target & timetable の形で,京都議定書と同等の「責任」を果たしてもらう(MRVも議定書並み).市場メカニズムも使える.
というものです.法的拘束力の下での規制が政治的な理由でできないなら,「ボランタリーな中ででも,実効性と透明性を高めるために,何ができるであろうか?」という面のデザインがキーポイントであり,世界はその方向に向かうことが明示されたわけです(Sovereigntyの問題を乗り越え,中国やインドも,大きく妥協しました).実効性と透明性は,MRV,ICA 等で担保しようとするわけですね.
どこまで削減するとか,どんな対策を採るという点は,ボランタリーであるわけですが,一方で,きちんと国際的なガイドラインに従ってそれ数量的に評価し,それを検証,審査プロセスにのせることで,ファシリテートしていこうという考え方です.
わたしは,この方向性はすばらしいと思います.事実上,京都議定書と2トラックで行く方向性の中で(これは事実です),ボランタリーの部分も実効性と透明性を確保するというアプローチは,現実的な選択肢の中で,ベストな解だと評価します.みなさんも,そのような「世界のメッセージ」を受け取ってください.
一方で,やはり気になるのは日本の今後です.「米中が参加する単一の法的拘束力のある枠組み」は,コペンハーゲンで実現性がまったくないことが明示されたと思います(だからこそEUも主張を曲げて京都トラックを先行させることにしました).それに拘泥する日本は,実はそのような議定書を狙っているのではなく,本心は「日本はボランタリーな枠組みに戻りたい」と主張していると解釈できます (さすがにそれは明言はなかったようですが,二国間クレジットなどはその準備ですよね).
ただ,法的拘束力のない中で,上記のように先進国にも target & timetable の形で,事実上,議定書とほぼ近い形で「責任」を果たす枠組みが動きつつあります.これにも背を向けるなら,UNFCCC から脱退するしかありません.日本はそこまで狙っているのでしょうか?
よく考えると,日本の産業界は,自主行動計画の下で,自主的とはいえ,目標を設定し,それに実効性と透明性を与えることを実践してきました.それは成功してきたと思います.どうして,その貴重な経験を,途上国がこれからしていこうとする枠組み形成の中で活かそうとはしないのでしょうか?「法的拘束力のある中に入っていないから対策していない」なんていう主張は,日本の産業界がこれまでしてきたことを否定するものです.
今回,京都議定書第2期の数値目標も,自主的にプレッジした数字を (京都メカニズム,シンク,キャリーオーバー効果などを考慮して) 補正する形で決めるとなりました.事実上,条約の下での target & timetable と,あまり変わらないと思います.ですが,日本が,さまざまな理由から京都議定書の法的拘束力という言葉を嫌うなら仕方がありませんが,それなら,米国と同じ条約の下で責任を果たすことになります.
日本は,今後も第2期に自らが参加しないと主張するなら,事実上,そのデザイン交渉では発言を差し控えることになりましょう.貴重な機会損失ではないでしょうか.
日本の主張は首尾一貫していましたが,(正論かもしれませんが) 近い将来の実現可能性のほぼないことのみを主張しており,代替案の呈示がありませんでした.これでは誰も話を聞いてくれません.世界は,日本をおいて,前述のような方向性に大きく舵を切りつつあるのです.
一方で,二国間クレジットという仕組みはどうでしょう?条約の target & timetable で使えるようになるでしょうか?わたしは今の形のままではダメだと思います.世界は,前述のように,信頼性と透明性を強化する方向性です.そのために,ルールを共通化し,環境十全性の名の下で,いくつもの手続きの導入は避けられません.JIトラック1 が許されるのは,両方がきちんとした排出量のアカウンティングスキームと絶対排出量目標を持っているからです.いまの二国間クレジットの考え方では,UNFCCC の各国を納得させることはむつかしいでしょう.
二国間クレジットで,日本は何を狙っているのでしょう? (日本の) すぐれた技術移転ではないでしょうか?これは,十分に世界に訴求する目的です.(国際的に通用するためには) 単純でないアカウンティング手法が不可避な排出権化ではなく,技術移転を新しい付加価値として提案するという考え方はいかがでしょう?その付加価値をインセンティブとする仕組みに昇華させてはいかがでしょう?新たに条約の下で技術メカニズムが動いてきます.そのデザインプロセスにおいて,そのようなスキームを提案していくのです.さいわい,2020年段階で年間1,000億ドルに達する巨額な資金移転が,合意されています.その有効な使い道ではないでしょうか.
日本は,それほど厳しい目標をプレッジ (またはコミット) できないかもしれませんが,一方で,技術移転を拡大させることを自らの最大の貢献ととらえ,そのための仕組みを自ら提案し,積極的にオピニオンリーダーとして世界を引っ張るというようになってくれることを,期待します.
松尾 直樹
二週間続いた カンクン会議 (COP 16/CMP 6) が終わりました.やはり朝までの徹夜の交渉でした.
結果は,UNFCCC のWeb に,決定文書のパッケージ (カンクン・アグリーメント) として出ています.
ふつうのCOP参加者は,COPが終わると疲労困憊して帰路に就くのですが,わたしはこれからが仕事なのです.最終版の decisions や各種情報を読み込んで,プロとしての分析をするわけですね.詳細な内容は,報告会でお話しいたします.日本のメディア等とはかなり異なった視点での分析となると思います.ご期待ください.
当然のことながら,このような国連の下での COP 交渉は,どの国も自国の主張と,他国の主張とのぎりぎりの妥協点を探ることになります.いろいろな思惑の中での交渉となるわけですが,その中で,いかに信頼感を醸成し,ロジカルに説明し,実績を示し,相手の主張や関心事にも譲歩していくか... が,重要となります.みなが核廃絶の重要性が分かっていてもそれがすぐにできないとと同じように,一体感・共有感をもって,一歩ずつ,進めていくしかありません.
当然のことながら,誰にとっても 100%満足する結果などはありえません.そのなかで,それなりに満足感をもてる結果が得られれば,それは成功 (のひとつの指標) と言えるかと思われます.
カンクン会議は,コペンハーゲン会議が誰にとっても不満足な結果に終わってしまったのを受けているわけですが,事前交渉などの進捗も芳しくなく,次の南ア・ダーバン会議に向けての通過点でした.その中で,どこまで「進めておくことができるか?」ということが,重要なポイントになります.ヘタをすれば(成果がほとんどなければ),対策の国際的モーメンタムが削がれる危険性すらあります(COP 6交渉が失敗に終わったときにもその危険性がありました).
もうすこし具体的言えば,
・将来の方向性を世界に示すことができるか?
・コペンハーゲンアコードの運用面を整備
の2点が重要な気がします.
この2点に関して,カンクン会議は,それなりに成果を出したと思います.とくに 2点目に関しては,十分に及第点ではないでしょうか.なにせ,LCA の決議文書 も KP の決議文書 も,[ ] のない文書の合意に成功したのです(かぎ括弧は未定部分を意味します).
ICA (途上国の行動の国際的な審査プロセス) など,かなり政治的色彩の強いアイテムに関しても,きちんと合意できているようです.
最大の政治的課題である京都議定書の第2期の目標値などに関しては,カンクンでは決まっていません.これは当然で,ダーバンで政治決着することとなります.途上国の行動や,LCA側の法的な位置づけなどもそうです.
逆に,このようなポイントに集中するところまで整理できたと言うことは,ハイレベルの政治判断の部分に大臣の関心を集中することができるわけですね.
カンクンの成果が,きちんと「バランスの取れたアウトカム」となっていたかどうか?は,実際に交渉を担当した人たちの 次の写真がよく表していると思います(IISDからの写真です).
スタンディング・オベーションですね.すばらしい瞬間です.きちんとバトンは,みなが満足できる形で 南ア・ダーバンに渡されたと言えるでしょう.
非常に多くの国から,カンクン会議の成果を評価する声と,エスピノ−ザ議長の努力をたたえるインターベンションがありました.できたら,日本にもその中の一国になってもらいたかったものです.
ついでに言っておくと,国際交渉はコンセンサスベースです.コンセンサスと全会一致(ユナニマス)は異なり,今回は,一カ国だけだだをこねていたボリビアの意見を,握りつぶしました.
二週間 お世話になったカンクンメッセは,もはや「兵どもが夢の後」です.
それでは,日本でお会いしましょう.
松尾 直樹 @ビデオや決議文を分析中
]]>
いよいよ最終日です.2時間前に予定されていたCOPプレジデントの informal meeting は,まだ始まっていません.裏で厳しい交渉が続いているのでしょう.ただほぼはっきり言えるのは,その中には,日本がいないか,いたとしてもその主張は (交渉している目的とは異なるので) 反映されることはないでしょう.交渉をブロックするという効果はあるかもしれませんが...
さて,きょうはいい天気です.われわれオブザーバーは,交渉担当者ではないのですが,おそらく今日(も) 徹夜の交渉が続くのでしょう.何時に決着が付くのでしょうか?
WMOのステートメントによりますと,2001−10年の10年間は,観測史上 もっとも気温が高い連続した10年間だったそうです.各国のそれぞれの関心事はあるでしょうが,現世代の意思決定者たちには,それを乗り越えて,一歩一歩でも着実に前に進む合意のためにがんばってもらいたいものです.
さて,きょうまさすがにもうサイドイベント巡りをするつもりはないのですが,昨日は,米国センターで,なんと防衛省の気候変動に関するサイドイベントを見てきました.
米国防衛省では,気候変動を米国に対する安全保障のひとつの大きな視点ととらえています.脆弱な国への気候災害の支援,難民の問題,食糧供給の不安定化,潜水艦の展開の方法論など,いろいろな分野が係わってきます.もちろん彼ら自身の活動の省エネなどの話もありました.日本の自衛隊には,日本の防衛の観点から戦略的に気候の問題をとらえるという (せめて)スタディーくらいは行われているのでしょうか...
わたしが興味を持ったもののひとつは,軍でしか持っていないデータ (たとえば北極海の氷の厚さのデータ,上空大気の状況など) などを,サイエンス側に提供してもらえるか?という点です.広く提供しているかどうかは明言はなかったのですが,すくなくとも米国政府機関でもある NOAA/NASA とは,共同で問題にあたっているという話でした.
サイドイベントはそのくらいにして,交渉会場のムーンパレスに移動して,CDMのコンタクトグループを聞いてきました.AM 3時過ぎまでの交渉で,ほぼテキストは固まったのですが,ボリビアがごねていて,継続審議となりました.
合意された部分には,たとえば方法論審議の時間を短くすることや,first-of-this-kindバリアの最終ガイダンスを求めること,ホスト国承認グリッド排出係数のこと,新技術のこと,Standardized Baselineのこと,地域偏差の是正措置のこと(バリデーションコストなどのローンスキーム設置も含みます)などが,記載されています.わたしのような専門家以外はちんぷんかんぷんでしょうから,詳細やその意味合いが知りたい人は,報告会をきいてください.
午後 9時過ぎから,COPおよびCMPプレジデントの エスピノーザ議長が informal stocktaking plenary を開きました.
いくつかの主要イシューで,先進国と途上国の大臣をそれぞれひとりずつアサインして,コーディネーションを行ってもらったことの報告を聞く場でしたが,どこまで進んだのかはっきりはしませんでした.AWG-LCAのキーポイントは,ICAという途上国の活動のレビュープロセスというところで,これはインド提案をベースに決まりそうと言う感触を持っています.
AWG-KPは,revised text FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.3 が出てきました.ん?ページ数が増えている...
議長の John Ashe は,アンティグア・バブーダというカリブの小国の人ですが,長年の気候交渉を経験しており,場合によっては変な意見を (たとえそれが途上国側であっても)切り捨てることができる人ですが,さて,そこまで進めていけるでしょうか?
こんばんは,徹夜の交渉が行われるでしょう.交渉は既に「個々のイシュー」から,「全体のバランスを考えたパッケージ」をどう組むか?というプロセスに移っています.
交渉自体はカーテンのむこうがわで,政府関係者でもかなりの高官以外は蚊帳の外です.一方で,CDMなど 実務レベルの課題も残っています(これは片が付くでしょう).われわれが知りうるのは,結果が出てきたとき=最後のAWGs, COP, CMPが行われる段階であるわけですが,結果を期待しましょう.将来に向けて,いかにモーメンタムをつけ,カンクンでの成果として一定の段階まで進めておくか?ということです.
カンクン宣言というような名前になるかわかりませんが,一連の COP決定シリーズ,CMP決定シリーズは必ず出てきます(一部はすでにLドキュメントとなっています).コアとなる部分がどうなるのでしょうか?
松尾 直樹 @今日のCOP Plenaryの最初のものがもうすぐ始まりそうです
]]>交渉会議も残すところ2日間となりました.実際は最終日は徹夜の交渉となるでしょうが...交渉関係者以外はかなり帰ってしまって,寂しくなってきています.
ときどき,途上国の国内での自主的な取り組みの話を聞く機会があるのですが,印象とすれば,中国もインドも,かなりしっかりした国内対策をとってきています.エネルギー対策それ自体は彼らにとっても関心事だからです.ただ,絶対量の制約が課される事への懸念と,内政干渉への懸念が,国際的な場での法的拘束力のある目標を受け入れるのを拒むわけです.原単位目標を設定して自主的に実効性のある対策を強化してきている... という主張であるわけです.(Cap-and-Trade規制に反対し自主性を主張する)日本の産業界とほとんど同じ主張ではないでしょうか.
昨日は,バイオガスという名前に惹かれて,ブラジルのサイドイベントに行ってきました.Itaipuという三峡ダムに次ぐ世界最大の発電所(水力でなんと14GW!)のあるところなのですが,バイオガスを(エネルギーのみならず)いろいろな用途に使おうとしているのは新鮮でした.エネルギーの場合にも発電も考えられています.エタノールで成功したブラジルが,豊富な家畜やバイオ系(廃棄物)リソースを用いて,バイオガスをベースとした再生可能(エネルギー)システム構築にも手を出してくるなら,すばらしいことです.
米国やEUも,いつも独自のパビリオンを出していますが,米国の科学分野の取り組みの特徴は,その中身もそうですが,いかにインタラクティブにビジュアルなわかりやすい形で成果をプレゼンするか... という点にもあります.地球でどのようなことが起きているか,どこまで分かっているか,どのようなインプリケーションがあるか,などを,専門家の方が iPad のように指で操作するタッチディスプレイで説明していました.
上記の氷の上にある「しみ」のようなものは,グリーンランドの氷床の上にある「池」で,ひとつの大きさが 1kmから2km程度です.そこから溶けた水が氷床の下にクラックを通して滑り込み,氷床自体を海に滑らせる潤滑剤となっています.IPCCの最新の第4次評価報告書には,この効果は(定量化できていなかったので)取り入れられていませんが,海面上昇のみならず,熱塩循環への影響など,かなり怖いこと(のきっかけ)になるかもしれません.
経団連のサイドイベントでは,日本でおなじみののいつもの主張がなされていました.
残念ながらフロアとのやりとりの時間がほとんど取れなかったのですが,いま懸命に行われている交渉自体を否定するような主張ですので,かなり違和感を覚える人が多かったと思います.
わたしの興味は(PEARの目的でもあります),途上国貧困地域で,エネルギーへのアクセスがままならない人たちへのソリューションをどうしていくか?という点でもあるのですが,それに関して,2つのサイドイベントがありました.
UN Foundationの Energy for a Sustainable Future のイベントは,面白かったのですが(UN Secretary-General’s Advisory Group on Energy and Climate Change (AGECC)からの報告です),せっかく作った報告書のエッセンスを,もうちょっとちゃんとプレゼンテーションしてもらいたかったものです.
次のサイドイベントでは,ADBの Energy for All のイニシアティブの話があり,途上国開発のコンテキストで,エネルギーへのアクセスの重要性が強調されていました.薪や石炭のブラックカーボンによる健康被害など,看過できない問題の解決という意味でも非常に重要なものなのですね.
そのソリューションの一つが,SNV(オランダのJICAに相当する機関です)の家庭用バイオガスプログラムのサポートです.PEARがやっていることと重なってきます.
なぜかJICAは,このような家庭レベルの分散型エネルギーアクセスに関しては,あまり興味を示してきませんでした(インフラ系はいろいろあるのですか).PEARとしても,バングラでの活動を通じて,JICAにこちらの方面にも目を向けてもらいたく思っています.
PEARでは,いまバングラデシュで新しいビジネスモデルを設計中ですので(BOPビジネスですね),うまくいけば,このモデルをいろんな国に拡げられれば... と思っています.
松尾 直樹 @きょうは曇っています
さて,交渉も新しい議長テキスト FCCC/AWGLCA/2010/CRP.3 と FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.2 が出てきて,本格的な交渉モードに入ってきたようです.
インドから(BASIC各国間で共有されているようです),AWG-LCA の途上国緩和パートに関して,新しい提案が出てくるなど,確かに動いてきています.この提案は,途上国の行動 (NAMA; Nationally Appropriate Mitigation Action)とからんで出てくる National Communications や ICA (International Consultation and Analysis) に関するものです.
ここでもういちど,カンクンで得られるものを国際交渉の点から整理してみましょう.
まず,たとえ新しい国際協定が採択されなくとも,COP Decisions, CMP Decisions は採択されます.このなかに,いかに実効性があり,将来の方向性を付ける決定をたくさん含めることができるか?という点が重要な点です.法的拘束力はありませんが,実質上,それに基づいて国際社会が動くわけですから.
何度も発言されていることですが,それは「バランスの取れた」ものである必要性があります.言い換えると,どの国もそれなりに納得できる「妥協」ポイントを探すと言うことでもあります.ひとつの要素だけが先走ることはなく,あくまで「パッケージ・ディール」であるわけですね.
2つのAWGでは,事務方(各国の官僚のことです)が,できるだけ詰められる点を詰めて(トレードオフの関係にある主要エレメントを整理するわけですね),残ったきわめて政治的色彩の強い点を,大臣級が「バランスを考えながら」パッケージとして政治合意する,というプロセスが一般的です.その意味では all or nothing (もしくは合意できる事項を確認して交渉継続)とも言えるでしょう.
当然ながら,交渉を行うものは,国としての方針はもちろん必要ですが,交渉に当たっての裁量の幅が与えられなければ,きわめて苦しい状況に陥ります.大きな決定にあたっては,最終的には,環境大臣から総理大臣に打診して決定されると言うこともあります.首脳が直接電話会議を行って (たとえば京都会議はクリントン大統領と橋本首相が電話で決定しました) ゴーサインを出す必要が出てくるかもしれません.
なお,合意は「コンセンサス」ベースで行われます.コンセンサスとユナニマス(全会一致)とは,すこしニュアンスが異なります.
さて,サイドイベントですが,昨日お伝えした日本関連の IETA (International Emissions Trading Association) 主催のサイドイベント “Japan: Shaky politics, nervous business, and a big, big reduction target” に行ったのですが(経団連というのはまちがいでした),10分遅れだったにもかかわらず,壇上には M物産の I氏だけでした.他の人は帰ったか 来られない... ということで,急遽 わたしがピンチヒッターをさせられました.日本の「考え方」は,やはり外国の人にはかなり「不可解」ですので,そのあたりを説明したつもりですが,はたして30人ほどいた人に伝わったかどうか...
そうそう関係ないのですが,IEATサイドイベントの会場のWestin Hotelの入り口に,ソーラーバイク(?)が展示してありました.
EU の行った EU ETSに関するサイドイベントは,はじめの部分は出られなかったのですが,eurelectric (欧州の電事連みたいなものです)が,電力会社の考え方を説明していました.自由化や大陸レベルでの系統連系の進んでいる欧州と,9社体制で自由化が限定的な日本のケースと言うこともありますが,かなり考え方が違います.下のスライドは,温暖化対応戦略とは,電力会社のすべての部門が関与する問題で,もはや企業戦略とほとんどかぶっている... ということを示したものです.
日本の気象研究所に相当する 英国の Hadley Centre のサイドイベントでは,IPCCの第4次評価報告書以降の研究がどう進んできているか?の説明がありました.Hadley Centreは,気候モデルシミュレーションで有名ですが,モデルはあくまで「各プロセスの理解」が進まなければ改良が進みません.氷床の減少が思ったより進んでいることなどが取り込まれてきているようです.
ただ,わたしが個人的に非常に興味のあるある abrupt climate change すなわち 気候系が突然大きく変化してしまうような事象に関しては,ほとんど進展がないようでした(質問したのですが,その人が知らなかっただけかもしれません).
PEARの得意とするプロジェクトですが,民間のデベロバと,民間の投資家を結びつけるチャンネルを,CTI (Climate Technology Initiative) が,PFAN (Private Financing Advisory Network) という形で行っています.CTIは,日本がイニシアティブをとってつくったものですし,ICETT がその事務局をしていることもあり,わたしの PEAR のプロジェクトも,ぜひ,これに載せていきたいと思っています.
そういえば,初日の話でみなに衝撃を与えて以来,日本の動きは目立ちません.交渉には妥協などのできるフレキシビリティーが与えられることが必要なのですが,あの発言が日本交渉代表団の柔軟性を奪ってしまったという見方もできるかもしれません.どこか(国内?)の方面への牽制球という政治的意味合いもあったでしょうが... 後逸...
松尾 直樹 @外はおだやかです
]]>3時から,環境大臣級が次々にステートメントを行います.きょうは EUがハイライトでしょうか.日本は木曜のお昼頃の予定だったと思います.さて,何か新しいことが発表されるでしょうか?
議長国メキシコの交渉は,皆の声をちゃんと聞くという点では評判がいいようですが,今後はどうなるのでしょうか.閣僚レベルになってくると,通常は次第に少人数で小さな部屋で交渉が行われます.これは「通常の」ことです.今回も(コペンハーゲンの亡霊を払って)そのようにしてもらいたいものです.
昨日は,朝に行こうとしたLDCのCDMのファイナンスに関するサイドイベントがキャンセルされてしまいました.
午後は,米国エネルギー省長官のチュー博士(なんとノーベル物理学賞受賞者です.米国はすごいですね)が話をすると言うことで,30分前にブースに行きました.ところが長蛇の列で,結局,別室でモニターで拝見するだけとなりました.
内容は,エネルギーや気候変動のことを,さすが学者という感じで話をされていました.あれでは,まわりのお役人ではついて行けないかもしれません(笑).かなり専門性の高い話でした.元物理学者のわたしは愉しかったですが...
IIASAは,温暖化の世界では,トップダウン型エネルギー系のモデルで有名ですが,今回はボトムアップ的な分析をベースにした研究プログラムを話していました.途上国のエネルギーアクセスなどのコスト/便益分析をかなりしっかりしている印象でした.日本ではコベネがローカルな環境面を意味すると狭い解釈がありますが,きちんと広く捉えているようです.来年の春に報告書が出るようなので,期待しましょう.
また,今年も中国の研究者による「カーボンバジェット」プロポーザルの発表がありました.過去の排出量総量をベースとした世界のキャップアンドトレードシステムです.今回は必ずしも中国が便益を受けるわけではないと言っていました.
この提案が国際交渉の場で採り上げられるとは思えませんが,もし中国政府が裏から強く戦略的にバックアップしていたら... そのような戦略性はないと感じていますが,さてどうでしょう?
インドのCDMのサイドイベントでは,世銀がPoAの分析をしていました.ちょっと気になったのは,バリデーション時点で問題がなかったサンプリング手法が,実際にプロジェクトが動き出したら変なことになる可能性があまり評価されていませんでした.「プログラム」をちゃんとオーガナイズするところのコストは,強調されていました.
サイドイベントの会場のカンクンメッセでは,いろんな団体のブースがあり,いろんな刊行物などがたくさん並べられています.おみやげをくれる場合もあり,わたしはPEARのプロジェクトを実施しているバングラデシュの国のブースで話をしたら,帽子をもらいました.
その他,いろんな「もの」を持ち込んでいるケースもあり,下の写真は「改良かまど」です.燃料効率がかなり上がります.いろんな形態のものが,途上国貧困地域で使われています
それでは,きょうはまず IETAでの経団連のサイドイベントに行ってこようかな...
松尾 直樹 @まだ時差が残っています...
]]>今朝も風もなくすがすがしい感じです.海も波が穏やかですね.
きょうから,二週目に突入します.環境大臣たちも続々カンクン入りしてきているようです.写真は交渉の行われているムーンパレスの外観ですね.昨年の寒かったコペンハーゲンと比較すると夢のようです.ただこの会場も,大臣級が訪れてくると警備が厳しくなりますね...
日本から持ってきている宿題やちょっと遊びに行ったこともあって,詳細な分析はできていませんが,ちょっといままでの交渉を振り返ってしましょう.
交渉は,SBI,SBSTAの二つの補助機関会合は,それぞれ,いくつもの結論を出して閉幕しました.個人的には,SBSTAのL.23ドキュメントに,興味があります.CDMの方法論をシンプリファイする件に関する点です(タイトルは Standardized Baselines under the CDM ですが,通常の方法論も標準化ではありますので simplification という言い方の方が意味は正しいですね).内容は,CMPが,
Requests the Executive Board to develop standardized baselines, as appropriate, in consultation with relevant designated national authorities, prioritizing methodologies that are applicable to least developed countries, small island developing states, Parties with 10 or less registered clean development mechanism project activities as of December 31 2010 and underrepresented project activity types or regions, inter alia, for energy generation in isolate systems, transport and agriculture, taking into account the workshop referred to in paragraph 8 below.
というところが主です.
CCSをCDMで認めるかどうか,という L.24ドキュメントも注目ですね.内容は,CCSがCDMで適格であることを認めた(!)上で,CMPが
Requests the Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice, at its thirty- fifth session, to elaborate modalities and procedures for the inclusion of carbon dioxide capture and storage in geological formations as project activities under the clean development mechanism, with a view to recommending a decision to the Conference of the Parties serving as the meeting of the Parties to the Kyoto Protocol at its seventh session;
となっています.ただ考慮すべき点が列挙されており,そう簡単ではありません.
2つのAWGの本体に関しては,土曜日に,どちらも重要な文書が出てきました.
AWG-KP の方は,FCCC/KP/AWG/2010/CRP.4/Rev.1 で,議長からのプロポーザルという形態をとっています.
AWG-LCA の方は,FCCC/AWGLCA/2010/CRP.2 で,possible element of of the outcome としています.
ともに内容はまだ精査できていないのですが,閣僚の人たちに見せられる水準にそれなりにストリームラインされてきている(それぞれ 46ページと 33ページ)と感じました.もちろん事務方で決められない部分は,まだ多く残されています.閣僚の人たちは,その決定のためにいるのですから.
なお,国際交渉は,基本的には「妥協」です.それなりにみなが「納得できる」線がどこにあるか探るわけですが,内容もその合意プロセス自体も,そのような「納得感」のためには重要なのですね.
このカンクンでの交渉プロセスは,ある意味,欧州でのハーグ会議(COP 6)で交渉が失敗した後の状況と似ているかもしれません.ただあのときの (これで京都議定書が日の目を見なくなるかもしれないという) 切迫感はなく,次に繋げる最終決定は次回のダーバンかな... というところはあります.
ハーグ会議の後は,COP 6.5 がボンで開かれ,(EUの大きな妥協もあって) マラケシュアコードのコアエレメント(政治的判断が大きい部分)である Bonn Agreements の合意にこぎつけました.そのときに中心となったのは,COP 6 議長のプロンク氏で,(コペンハーゲンで「天から降ってきた」と称された)議長テキストをみずから作成し,それをベースに交渉をぐいぐい引っ張ったものです.
それにみんながついていった背景には,プロンク氏が,(COP 3 のエストラーダ議長と同じく) みなの意見を一生懸命汲んで,でもひとつの結論に持って行くために文字通り粉骨砕身の努力をしていたのが,みなにもよく分かっていたということもあるのでしょう.今回,メキシコは,そこまですることはなく,COP議長からの政治合意のテキストは(いまのところは)出さない... と言っているようです.
いずれにせよ,事務方でできることはそれなりに整理されてきています.COPやCMPでは,Decisions と呼ばれる一連の決定が行われ,それは (たとえ新しい法的な協定の形をとらなくても) 今後におおきな影響力を持つものとなります.
事務方の努力をベースに,大臣たちが,どのように「政治判断」を行ってくれるのか,期待しましょう.
ところで,ここカンクンのカリブの海は,まったく磯の香りがしません.ほとんどものが腐敗していない非常にきれいな海です.実は,日曜は,オットセイ,マナティー,ドルフィンとすこし戯れてきました.わたしはカイギュウという滅んでしまった動物が好きなのですが(エスキモーたちの海にいました),マナティーもその一種です(がこちらは暖かい海ですね).マナティーもそうですが,海の生態系の大きな部分を占める珊瑚礁は,温暖化の影響をかなり敏感に受けます.すこしでも遅らせるように努力したいものです.人間だけの問題ではありません.
それでは,また.
松尾 直樹 @またエンジンをかけて...
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久しぶりに,今朝は風もなくすがすがしい感じです.
交渉もいろいろ動いてきて,昨日は,議定書提案に関するコンタクトグループに参加(傍聴)しました.新議定書案が昨年からAOSIS (小島嶼国)などからいくつか出ていて,それを議論するプロセスなのですが,実際は,いまのAWG-KP交渉,AWG-LCA交渉の,「法的拘束力のある議定書」という形をどうとるか?というものです.必ずしも新しい名前の議定書ができるとは限りません.強硬派のAOSISに対し,不要であると主張する中国やインドなどの対立という構図です.EUはサポート側です.日本はいつもの単一の枠組みを主張していました.
コンタクトグループに引き続いて,クローズドなインフォーマルミーティングが開かれたはずです.なんらかの糸口が出てきたのでしょうか?
それから,バスで,Moon PalaceからCancuun Messeに向かったわけですが,このバスはジャトロファを用いた100%バイオディーゼルバスです.のり後心地は... 普通のバスといっしょですね(笑).
サイドイベントでは,あたらしくできたCDM方法論ブックレットの説明をきいてきました.このような試みは,とくに素人には非常に役に立つものです.ただ,CDM理事会のガイドライン/ガイダンスの説明が弱く,加えて「行間を読む」ような説明があるとなおベターであると発言しておきました.少なくとも2回のCDM理事会会合毎にリバイズされるようです.
米国政府のイベントでは,気候変動と災害に関するリスク対処体制に関するものをすこし見ました.適応の方が,緩和より「コベネフィッツ」の要素が強くなります.いずれにせよやったほうがいいわけですね.
また,CDMと技術移転に関するイベントでは,旧友であるEric Haitesの仕事が発表されていました.5000程度のプロジェクトのPDDをサーベイした力作で,CDM事務局のWebサイトからダウンロードできます.次回は,ケーススタディーを中心に,Good Practices事例がわかる感じを中心にしてくれるといい... とコメントをしておきました.技術移転にもいろいろなケースがありますが,通常のプロジェクトは,商社や金融機関がCERバイヤーとなります.一方で,技術をもっている製造業の人が事業者となる数少ないケースでは,技術移転そのものが目的となり,それをCDMでブーストするということとなり,そのようなケースが増えてもらいたいものですね.南南協力などの成功事例も興味があります.
また,このような技術移転のためのプラットフォームがあるといいのですが,いまあるものはどれも貧弱です.今 交渉で動いている「技術メカニズム」がどのようなものになるか,期待しましょう.
それでは,また.
松尾 直樹 @今日は暑くなりそうです
さて,昨日は GEF (地球環境ファシリティー)のサイドイベントに参加しました.IGESのときの仲間である Bob Dixon がリードしています.気候変動枠組条約などのフィナンシャルメカニズムで,いろんなファンドなども動かしています.今回は,mitigation のみならず adaptation にも関する技術移転がテーマでした.
民間との連携も動いてきているようなので,うまくわたしのBOPビジネスとの接点が見つけられるといいのですが...
それから,CDMのコンタクトグループに出ました.
これは,現在のCDMに関して,CDM理事会へ CMPがどのような指図を行うか?という点を交渉する場です(2013年以降の話ではありません).議論すべき議題のリスト自体が議論され,CDMというメカニズムの継続性問題をここで (preamble のような形で)「市場に対するシグナルとして」載せるかどうか,がいろいろ議論されました.その他の場所でもそうですが,「市場へ明確なシグナルを出すこと」の重要性が,これだけ交渉の中で認識されてきたのはうれしいことです.むかしは,途上国はほとんど市場メカニズムに反対でしたから...
もうひとつ,PoAの重要性も大きく認識されており,どのような形の方向性がつくのか,期待されます.日本政府にインプットしておこうかな...
EUによる市場のリンケージのサイドイベントは,あまり出られなかったのですが,よくみる以下の図が説明されていました.
EUは,市場ですべての排出源をカバーし,プロジェクトレベルからETSでカバーする方向性を明確に指向しています.非常にわかりやすいのですが,現実の世界はなかなかそれについてこないのですが... おおいなるチャレンジと言えるでしょうか.
昨日もお知らせした初日の日本のインターベンションや,記者会見の様子をみた環境NGOは,Fossil of the Day のようなものだけでなく,以下のような展示もしていました.惜しむらくは,日本政府代表団の交渉している人は,カンクンメッセにはいないのです...
それでは,また.
松尾 直樹 @日が差してきました
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きょうも強い風が強いですね.青い海が波立っています.海で泳ごうと思っている人にはあいにくです(わたしは水着を持って来るのを忘れてしまいました...).
さて,昨日(水曜)は,交渉では,CDM理事会や JISCからの報告がありました.それをベースに,きょうからコンタクトグループ(テーマごとの交渉)が動き出します.
驚いた点は,AOSIS(小島嶼国)の新議定書案に関するコンタクトグループが設立されました.これが,法的な位置づけが明確でなかった(言い換えると国際協定を作るとは明言されていなかった)AWG-LCAの交渉に,影響を与えるかしれません.Zammit Cutajar (むかしのUNFCCC事務局長)が議長をつとめるので,期待しましょう.
昨日は,IPCCのサイドイベントがありました.E-mail流出事件など一連の出来事の中,大きくなってきているIPCCの役割の中で,その役割に見合ったガバナンス構築を,Pachauri議長が話をしていました(そうそう 彼の頭にblack carbonがsequesterしたのは???).IPCCの役割に関しては,ここに書いたものがありますので,よろしかったらどうぞ.
それから,2007年のノーベル平和賞を基金に,途上国の若い研究者育成プログラムが動き出しているということでした.すばらしいお金の使い方ですね.
それから,現在の AR5 (第5次評価報告書)の状況,その中の不確実性の評価などのクロスカッティングイシューの扱い方のガイダンス,政策担当者や社会へ「わかりやすく.政策に役立つ形での」科学的情報提供の重要性,現在進行形の特別報告書 ("Managing the Risks of Extreme Events and Disasters to Advance Climate Change Adaptation", "Renewable Energy Sources and Climate Change Mitigation")などの説明もありました.あまり中身に踏み込んだ(新しい知見に関する)説明がなかったのは残念ですが,クロスカッティングイシューや,「条約第2条(究極の目的)に対してIPCCが言えること」は,Pachauri氏が副議長だったTAR (第3次評価報告書)のとき,いっしょにガイダンスペーパーや統合報告書を作成したこともあり,なつかしく感じました.
中国政府のサイドイベントも,IPCCと同時にあったので,参加できなかったのは,残念でした.
その他のサイドイベントでは,スマートグリッドの話を聞きました.
電力の相互コミュニケーションという本来の視点が上手にプレゼンテーションされましたが,そこからの拡張,たとえばガスなどの他のエネルギーや,カーボンマネージメントという視点が薄かったのがすこし残念でした.
夜,NIESの藤野さんのマネージで,日本人たちといっしょに食事に行きました.なかなか怪しい(!)メキシコ料理屋さんでした.
そうそう,昨日お知らせした,日本代表の発言ですが,わたしは直接聞いていないのですが,話によると,その瞬間に会場が凍ったようです.案の定 昨日の Fossil of the Day にも選ばれていました...
ECOの記事でも大きく採り上げられています(下に添付します).ECOも Fossil of the dayも,環境NGOの意見で,バイアスがかかる傾向があるのですが,今回はみなの意見を代表しているような気がしました.
Japan: No to Kyoto Under Any Circumstances
When leadership was needed most, the home country of the Kyoto Protocol made a de- structive statement in the KP plenary. It re- jected a second commitment period of the Kyoto Protocol by saying ‘Japan will not inscribe its target under the KP on any condi- tions or under any circumstances’.
‘Preferring’ a single-treaty approach is one thing, but aggressively denying the future of Kyoto is quite another. The statement upset many Parties and created an unconstructive atmosphere.
This COP was supposed to be the place to rebuild trust among parties, but Japan’s move not only could degrade trust but even poten- tially wreck the negotiations.
At a time when the world is seeking to strengthen the climate regime, Japan’s hard stance, in the guise of getting the US and China to make mitigation commitments, risks leaving us with no deal at all.
A large majority of Parties have said they want a legally binding outcome. It’s time they hold firm to the legally binding treaty that was so hard-won in those late nights in Kyoto. Japan should honour the basic frame- work that all countries agreed in Bali, which is for developed country Parties to continue their mitigation obligations under the KP, for a legally binding agreement under the LCA track to include comparable efforts for the US, and for the developing countries to un- dertake nationally appropriate mitigation ac- tions that are supported by finance, technol- ogy and capacity building.
Does Japan really want to be known for the burial of the Protocol that was born in one of its beautiful cities?
それでは,また.
松尾 直樹 @木曜の朝
2日目は,静かに始まりました.国際交渉は,補助機関会合の本会合が動いていましたが,わたしはもっぱらサイドイベントを見ていました.なにせ,サイドイベントの開かれるカンクン・メッセと,交渉の行われているムーン・パレスは,往復すると1時間半かかるのです...
サイドイベントで一番注目されたのは,CDM理事会によるQ&Aセッションです.
悪名高かった(?)手続きのストリームライン化の話が,来年早々には片が付くという感じでした.
もうひとつ,最大の排出権(CERs)供給プロジェクトのタイプであるHFC-23破壊プロジェクトの方法論AM0001に関する話がありました.実はこの方法論は,最初にわたしが開発したもので,ゲーミングという概念を盛り込んだ最初の方法論でもあります(というか承認された方法論では最初ですね).さらなるゲーミング防止方法を加える形で,改訂されるようです.フィードストック系の話があるので,テクニカルに難しい点があるのですが...
このAM0001は比較的新しいプラントは対象外で,その意味でそのようなプラントは,HFC-23を出し放題です.そこも含めて,(CDMだけでなく)国際的な制度の中で,たとえばファンドなどをつくって破壊装置の導入を進めてもらいたいものです(と,発言したのですが,ピンときていないようでした.モントリオール議定書で扱おうとした試みは頓挫しています).
日本の機関であるエネ研,OECC,JICA,GECなどによるサイドイベントもあり,CDMのポジティブリスト作成や,コベネフィッツの重要性などが議論されました.盛況で関心を集めたのはいいのですが,もう一歩,具体性をもたせるための踏み込んだ分析をしなければ... というのが惜しまれます.
その他,現行のCDMのリフォーム方法などのサイドイベントなどに参加しました.
ここメキシコは,とうがらしをはじめ,魅力的な野菜が多く,会場でもディスプレイしていました.仕事で忙しく,なかなか食べる機会がないので,こんばんは,どこかに食べにいこうかと思っています.
そうそう,毎日 ENB (Earth Negotiation Bulletin) という交渉情報が出ます.そのなかで,"In the Corridor" という記事を真っ先に読むのですが,今朝出たものの中に,日本の話が出ていました.
Some, however, were heard wondering about the impact of Japan’s “bombshell” statement on Monday that it would neither inscribe its commitments in an amended Protocol Annex B, nor accept a COP/MOP decision extending the Protocol’s first commitment period or establishing a second commitment period. One seasoned observer estimated that “the lines in the sand are now clearly drawn - Japan won’t accept a second Protocol period and many developing countries saying there will be no progress under the AWG-LCA without concrete progress under the AWG- KP.”
日本が交渉をブロックするくらいなら,「きちんと低い目標をプレッジする」という戦略に変えたらいかがでしょうか?日本の最大の関心は,自国が相対的に厳しい規制を負うことでしょう.米国や中国が法的拘束力のある枠組みに入って来れないことがわかっているのに,それを条件にする(隠れ蓑にする)ことは,かなり問題があると思います.どの国も,その国の目標は自国で宣言したものをベースに交渉されます.けっして,25%を強制されるものではないのですから.
それでは,また.
松尾 直樹 @風の強い三日目の朝
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「共通だが差異のある責任」という条約で確立されたコンセプトの下,まず先進国から... ということを具現化したものが京都議定書であるわけですね.そして,その先進国の約束をいかに強化していくか?それから途上国もどういう形で対策を実効性のある形で強化していくことができるか?が,最近の国際交渉のテーマです.
昨年のコペンハーゲン会議 (COP 15/CMP 5) では,先進国の持っていた大きな期待 (ひとつの統一された議定書で双方をカバーする) と,途上国の「まだその段階ではない」という現実路線(?)とのギャップが大きく,残念ながらこの問題で結論を出すことができませんでした.これまでの交渉プロセスは,以下の図をご覧ください.
日本は交渉のポジションを変えていませんが,EUは途上国の頑なな態度に遭い,いまは世界全体のモーメンタムを削がないためにも,まず京都議定書の第二期を決めてしまい,同時に途上国の次のプロセスを動かすことを狙っているようです.米国は中間選挙の影響もあり,リーダーシップが期待できる状況にはありません.
(好き嫌いの問題はさておき) EUの指向する方向性が,今回のカンクン会議の結論となるかと思います.国際協定の形をとるのは,来年の南ア・ダーバン会議とするという結論となるでしょう.なお,暫定運用則ともいえるコペンハーゲンアコードは,ボランタリーな行動をベースとしたものですが,先進国に関しては現行の京都議定書の法的拘束力に基づいたもので,途上国はボランタリーながら,その実効性を担保するものとして,数量的なMRV (測定,報告,検証) を基調に,新たな運用則策定プロセスが始まると思われます.
以上は,ざっとみたわたしの予想です.どうなるかは,終わってみなければ分かりません.先進国と途上国の中間的な位置づけにあるメキシコの議長国としての采配に期待しましょう.下は,COP で議長の采配をふるうメキシコの外務大臣Patricia Espinosaです.
今年も,好評だった COP の報告セミナーを 12月21日(火)に,開催いたします.PEARのWebに案内がありますので,よろしかったらご参加ください.3時間,みっちり,基礎から専門家の分析までお届けします.メディアや役所の発表だけではものたりない,本質が何でどうなっていきそうか?をお知りになりたい方には,最適なセミナーだと自負しています.Q&Aの時間も長くとる予定です.
さて,カンクンは,長い砂浜に代表されるリゾート地です.わたしはいつものようにコンドミニアムタイプの部屋に泊まっています.1万人(?)の参加者の中で「自分で」お金を出して参加している人は,そんなに多くないはずで,二週間は長いですからね... 目の前は紺碧の海で,潮騒を聞きながら仕事に勤しむことができます(笑).
初日は,いくつかのサイドイベントに出ました.そのひとつ,JI監督委員会(JISC)のイベントは,2013年以降,JIがどうなるか?を議論していました.詳細は,JISCのCMPへの報告をごらんいただくとして,2つのトラックをマージすることを含め,いろいろなオプションが検討されています.
その他,CDMベースラインの標準化に関するサイドイベントにも出ましたが,まだ理論的整理がイマイチという印象でした.クライテリアが詰められずに標準化(正確には単純化)が議論されている程度です.もうすこししたら,ペーパーでも書きましょう.
夜には,メキシコ政府主催のレセプションがありました.暗い中で食べ物をとったら,辛....
ちょっとインターネット環境がよくないのですが,またご報告いたしますので,おたのしみに.
松尾 直樹 @二日目の朝
]]>2010年を迎え,みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
PEARは,社会性の高い活動,それも発展途上国の低所得層むけの活動を,CDMという地球温暖化問題のマーケットメカニズムと結びつけることによって,ビジネスに乗せる=持続可能な形で実施していこうとするソーシャルベンチャーです.
CDMにおいては社会性という観点がどうしてもないがしろになる傾向があり,一方で開発の世界では NPOは企業などからの「寄付」や「援助」に頼らざるを得ない... という状況がありますが,PEARの活動は,これらを結びつけることで,打破しようとするものです.同時に,先進国の自主的な温暖化対策であるカーボンオフセットから,カーボンマネージメントに結びついてくることも企図しています.
さいわい,わたしたちはCDMや温暖化問題の専門家集団ですので,その専門性を活かそうとしているわけですね.
その具体的な手段として,PEARが行ってきているものは,中国重慶の貧困農村において,バイオガス・マイクロダイジェスターという一戸一戸の農家に,彼らの家畜である豚の排泄物を使った熱(バイオガス)エネルギー供給システムを導入し,それによって石炭などを代替することで,CO2削減とするプロジェクトです.
石炭への現金支出を回避,屋内大気汚染をなくし,薪収集の重労働を緩和,良質の肥料が得られる,などのその農家にとっての大きな便益の他に,地域的な生態系保全やエネルギー自給農村としてのエネルギー安全保障面,所得格差問題の緩和という公益的な便益も大きなものがあります.
PEARは,このようなすばらしいプロジェクトを,プログラムCDMという新しい方式で,追加的に実施していくわけですね.最初は,カーボンオフセットを全面的に出して,それが生み出すカーボンクレジット(排出権)をカーボンオフセットに使ってもらうことをベースに動かそうと思っていましたが,これからはむしろ,(排出権購入というより)そのようなプロジェクトに「直接かかわってもらう」ような形に修正していこうと思っています.
すなわち,先進国の企業や個人単位で,このようなプロジェクトに投資し,「育てていく」機会をご提供し,CO2削減のみならず,社会的な持続可能な発展そのものを実現化していく喜びを共有していきたいと思っています.企業でしたらある個別の村を対象とし,個人でしたらある個別の農家を対象とした相手の顔の見える「関わり」ができるわけですね.農家の方も,CDMに対する期待や感謝が非常に大きいことが,上記の年賀の挨拶の写真からも判りますよね.
このような考え方が,日本や先進国の社会に受け入れられるかどうか?が,わたしたちPEARの 今年のテーマです.
このプロジェクトは,昨年の3月にキックオフ式典が行われました.なかなか審査機関が見つからず苦労しましたが,ようやく昨年末に審査してもらうことが可能となりました.UNFCCC(気候変動枠組条約)京都議定書の CDMのWebサイト にドキュメントが出ていますので,よろしかったらご覧ください.そこに出ている具体的活動の最初のものは,洞爺湖サミットの資金援助を受けた小さなものですが,それに続く活動を,みなさんの「気持ち」という形で実施していきたいと思っています.
来年中にCDMとしての登録ができることを期待していますが,その前から,みなさんにその魅力をお伝えしていきたいと思っています.
企業の方は,御社の温暖化問題への寄与としてのポートフォリオの一つとして,このような社会性の高いプロジェクトを含めることの意味を考えていただければ幸いです.
個々人の方が,直接,このような社会性の高いプロジェクトに投資をして,カーボンクレジットというリターンを毎年10年間得られる機会というのは,おそらく世界で最初の試みとなります.得られた排出権は,ご自分の排出量のオフセットに使っていただいてもけっこうですし,市場で現金化することも可能です(PEARが代わりに行います).
このプロジェクトは,それなりに時間のかかるものですので,小さな企業であるPEARは,中国での炭鉱メタン(CMM)削減プロジェクトをCDM化し,そのCDMクレジット販売を仲介することで,生計を立てていこうとしています.これもやや時間がかかってしまいましたが,昨年の10月に一件,CDMとしての登録ができました.これで財政基盤がある程度固まってくるはずです.
その意味で,今年は社会に対し,「社会性とCO2削減の両立」という新しい価値を提案していく用意ができてきました.この考え方に共感していただく人々や企業を増やし,ともに活動していくことが,今年の PEAR の最大のテーマです.プロジェクトでは,バングラデシュなども視野に入れていこうとしています.
可能であれば,もうひとつのテーマでもある「個人のカーボンマネージメントの社会インフラ整備」提案もしていきます.
今年は,PEARは,大きく飛躍していく所存です.ぜひ,みなさんにも サポートと言うより,このような価値を いっしょに作っていきませんか?
松尾 直樹
P.S. 昨年末のコペンハーゲン会議直後の報告セミナーはおかげさまで好評に終わりました.コペンハーゲンアコードの和訳も載せておきました.どうもありがとうございます.今年末のメキシコ会議後にも行う予定です.ご期待ください.
P.S.2 Climate Experts のWebも更新しています.よろしかったらご覧ください.
]]>コペンハーゲン会議が終わりました.金曜までの会期ですが,終わったのは土曜の現地時間の 午後3時半です.
100カ国を超える国の首脳がやってきて(潘基文さんもこれだけの数の首脳が一堂に会するのを見たのは初めてと言っていました),オバマ大統領を含めたその中の25カ国の首相や大統領が,Friends of the President として,徹夜の交渉でまとめた「コペンハーゲン・アコード」も,小島嶼国のグレナダなどの涙ながらの訴えにもかかわらず,COP (CMP) の本会議でコンセンサスを得ることができず,そのままの形で採択されることはできませんでした.
ただ,このアコードは,COP に take note されることとなり,有志国が集まって,実質的に運用していくことはできそうです.Friends of the President の 主要25か国はもとより,かなりの国が賛成していましたので,かなり実質的なものとして機能していくことが期待されます(コペンハーゲンアコードは,すでに UNFCCCのトップページに,他の決議文書と一緒にアップされています.なお下の写真はENBからです).
さて,この会議は,わずか半歩の前進に終わったわけですが,簡単に分析してみましょう.
世界の国々,とくに温暖化問題を早く対処すべきと思っている国々や人々にとって,コペンハーゲン会議にかける期待は非常に大きなものでした.大きすぎた=拙速すぎた... と言えるでしょうか.「科学からのシグナルや脅威感」と,「排出削減対策や目標が現実的に可能かどうか?」という点が常にせめぎ合うわけです.最近では 前者が先進国政府の中では支配的となっていました.
一方で,大排出途上国にとっても,自国の経済開発にとって 省エネの重要性をかなり認識するようになってきて,今回も会議に先立って,自主原単位目標を宣言してきた国が多数でてきました.ずっとこの世界を見てきた私にとって,これにはすごく大きな「うねり」を感じたものです.
ただ,それも程度問題で,やはりステップ・バイ・ステップでしか進むことができないわけです.すなわち,いきなり3歩進むことを先進国が要請したため(バリ行動計画のマンデートを超えて ひとつの統一的な国際協定合意を主張したわけです),拒否感が強く出てしまったと言うことでしょう(表面的にはデンマーク政府の 会議の合意への持って行き方の不透明性が問題化しましたが,その裏には,先進国との間の信頼感が醸成できなかったことがあると思います).
アナロジーとして,日本の産業界のこれまでの動きを振り返ってみるとわかりやすいでしょう.
京都会議の前に,炭素税などを課せられる前に自分たちで行動を,としてつくったのが経団連の自主行動計画です.あくまで「自主」に目標を宣言し,政府からの規制という形を拒否した姿がそこにありました.それが次第に,社会公約になって,自主的な第三者検証の導入に加え,政府の行動計画に組み込まれたり,政府審議会でのレビューが入るようになり,目標強化のプレッシャーが政府からかかるようになっています.次は cap-and-trade でしょうか.
これをいまの途上国にあてはめるとどうでしょう? まさに自主目標策定の段階であるわけです.MRV (measurable, reportable, verifiable) といっても,内政干渉を嫌ういまの中国などの姿は,まさに同じと言えるでしょう.経団連の自主行動計画は,日本の産業界にとって実効性を保ついい手段でしたし,長い年月をかけて,いまのような姿となっています.途上国の枠組み形成にも 同様のステップを踏んでいくことが必要である,と,今回のコペンハーゲン会議は教えているのかもしれません.
わたしも,もうすこし考えてみることにします.22日 (火) の報告セミナーでは,そのあたりを詳細に分析した内容をお話しできるでしょう(CDMや排出権市場の発展などや,今後へのインプリケーションの話もします.まだ席はあるようですので 有料ですが よろしかったら PEARのサイトから お申し込みください).
それでは,日本で再見!
松尾 直樹@コペンハーゲン