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重慶バイオガスダイジェスタープロジェクト視察感想文 [PEARのプロジェクト開発]

先日,英国サセックス大(MA in Environment, Development and Policy)に留学中の井上直己さんに頼まれ,彼の修士論文作成のため,われわれの重慶のバイオガス・マイクロダイジェスター(BMD)プロジェクトのサイトを見学してもらいました.

いずれ,その成果は立派な修士論文になるでしょうが(期待しています!),とりあえず,感想文というような形で書いていただきましたので,みなさんにご紹介いたしましょう.

筆者紹介:  英国サセックス大学 開発環境政策学修士課程に所属. 卒業論文においては,中国国内におけるBMD技術の内陸地域への普及のあり方をテーマとし,そのケースステディーとして,重慶市開県龍王村で実施されているバイオガス・マイクロダイジェスター(BMD) CDMプロジェクトを取り上げ,7月頭に事業の実地調査に訪問.

 


 

中国奥地の農村で広がるバイオガス・ダイジェスター

― 重慶市龍王村のCDM事業視察報告 ―

2009年7月29日  井上直己(いのうえ なおみ)

 

ゴウゴウ音を立ててガステーブルから吹き上げる青白い炎、そしてキッチンの真横にある畜舎で横たわる母豚に群がる多くの子豚達、これが龍王村で普及が進むバイオガス・ダイジェスターを見学した際に強く印象に残った光景です。事前に読んだBMDに関する資料の中では、メタンガステーブルの火力が弱いという短所が指摘されたケーススタディーもあったのですが、それを基にした私の予想は見事に裏切られ、各世帯のキッチンを訪問する度に、勢いよく吹き出る炎にただただ驚嘆してしまいました。コンロ.jpeg

キッチンの片隅には技術導入前に購入した練炭が調理用燃料としての役割を終え、山積みされていました。練炭の使用はキッチン中を煤(すす)まみれにしてしまうのみならず、煙によって室内大気汚染を引き起こし、健康被害をもたらします。BMD導入による練炭使用削減は、二酸化炭素排出削減につながる以前に、そうした生活環境改善につながることから、村民の皆さんからは大変熱く歓迎されていました。まだ導入していない村民の方々は口々に早期導入を求めていたのが非常に印象的です(写真は不要になった練炭の山)。練炭.jpeg

農村BMD技術について、中国は先進国といっても過言ではありません。ここで導入されているBMD技術は「伝統技術」と呼ばれるタイプのもので、中国において1980年代からの技術開発によって発展した技術であり、もっとも簡素な構造を持つ装置ですが、その分、低コストでメンテナンスも比較的容易であることから、遠隔地の農村地帯への普及には大変適していると言えます。2007年末までには中国国内でおよそ26.23百万戸の家庭にBMDが普及されていると言われていますが、当該CDM事業や中国政府の補助事業などを通じて、当該技術の更なる技術普及が期待されていることと思われます(写真は養豚場)。ぶた.jpeg

ただし、人糞のみでは調理に必要なメタン量を発生させることが困難であることから、BMD導入は世帯が養豚を営んでいることが前提となっていることに注意が必要です。つまり豚を保有していない世帯(豚を保有するだけの資力の無い農家)については、BMD導入の可能性は非常に限られているといえます。しかし一方で、龍王村では大規模な養豚農家がBMD設置によって大量にメタンを発生させ、近隣の豚を持たない世帯にも供給するという計画も進行中です。こうした取組は石炭依存からの脱却を更に促進していくことになるでしょう。農家同士が協力して、練炭からバイオ由来のメタンへと大きくエネルギー・シフトしていく構造転換の現場にまさに居合わせているのだということを、私は強く実感しました。

農村の方々は、気候変動のためにBMDを導入しているという意識はほとんど無いといって良いと思います。ただそれが練炭購入コストの削減につながるから、キッチンの衛生向上につながるから、そのために技術を導入しているのです。そして、それが結果的に温室効果ガス排出削減にもつながる。この事業はまさに「経済発展と環境保全の好循環」を体現した好例だといって良いと思います。

みなさん.jpeg

視察に協力いただいた方々とわたし(中央)


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コメント 1

出会い

はじめまして☆
素敵なサイトですね^^応援してますよ♪

by 出会い (2010-05-30 10:54) 

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